薔薇は西洋で花の女王と称賛を博し、日本では洋花の代表と見なしてきた。野趣に富んだ在来の野茨(のいばら)は、安土桃山時代の屏風、宗達工房の草花図、狩野派による襖絵や屏風などに描いてある。平安時代に伝来した薔薇(そうび)とか長春花(ちょうしゅんか)とよんでいた庚申薔薇(こうしんばら)も、鎌倉時代の絵巻に表し、室町時代の屏風に数多く描き、狩野派も屏風や襖絵へと彩管をふるっている。
当、訪問着に描いた薔薇は、華飾を避けて枯淡な趣に表そうと試みた。