山並みに靄(もやが立ち込めて静まり返る湿潤な深山幽谷の情景を、墨一色によって濃淡や強弱をつけて水墨山水画風に描く。
 裾模様に表す風景模様の構成は、衣桁に掛けて広げた場合に左部(上前)を近くと定め、右へ辿るに連れて遠くとする配置法が一般的な表し方になる。きものの装いは、下前衽を身に当てて内側に、左の衽をその上に重ねて着る右前の右衽(うじん)右衽(うじん)となり、装ったときには上前が一番よく見える位置に来る。従って装う人は右前合わせになる関係から前面の上前衽が始点となり、次いで上前前身頃へと続き、模様は左から右へと視線は向かう。